スチームパンクの配色、何色を選べばいい?「連想」から考える色の決め方
- 日本スチームパンク協会

- 5月13日
- 読了時間: 9分

喫茶蒸談へようこそ
スチームパンクのカラーを最初に扱った回では、茶と黒のベース、アクセントとして機能する青・赤・白そうした「色の選び方」の入口を話した。
今回はその一歩先へ進んで。「なぜその色がスチームパンクとして機能するのか」というルーツを整理したうえで、前回さらっと触れた白をテーマに、実際のコーディネートとして深く使えるようになるための話。
■この対談に登場するふたり

MaRy(マリィ):日本スチームパンク協会 代表理事。感覚派で、スチームパンクの“ワクワクするところ”を見つけ出すのが得意。気になったことはどんどん質問するスタイルで、対談の聞き手としても案内役としても活躍中。

ツダイサオ:日本スチームパンク協会 理事。物事を論理的に捉えるタイプで、歴史や文化、技術の観点からスチームパンクを語るのが得意。蒸談ではMaRyの投げかけにじっくり応える“解説役”として登場することが多い。
おさらい、前回の色の話から


前回の話、まだ頭に残ってる。茶と黒がベースで、青や赤をアクセントにするっていう。「アズーロ・エ・マローネ」って言葉も印象的だった。

ちゃんと覚えてくれてたんだ、嬉しい。今日はその続きというか、「なぜその色なのか」をもう少し整理したくて。前回は色を選ぶコツの話だったけど、今日は色のルーツの話をしてみたい。

ルーツ?どういうこと?

スチームパンクに出てくる色って、真鍮とか銅とか革とか、そういう素材の色そのものが出てるって言われ方をよくするよね。

うん、そういう説明よく見る。素材の色がそのままスチームパンクカラーになってる、みたいな。

それ、半分正解で半分補足が必要なんだよね。確かにパーツとして本物の真鍮を使うことはある。でも実際のファッションやコーディネートって、真鍮色に塗装したものを使ったり、それっぽい色の革を選んだりすることも多い。素材をそのままそっくり使うとは限らない。

あ、そっか。全部本物の真鍮とかってわけじゃないよね。コスプレでも塗装したアクセサリーとか普通にあるし。

そう。だから正確に言うと、「素材の色を直接使う」というより、素材から連想されるイメージの色がスチームパンクの色の文法になってる。真鍮そのものじゃなくて、「真鍮っぽい」「銅っぽい」と感じさせる色が機能してる。

なるほど!「連想」が先にあるんだ。

しかもその連想には、経年変化のイメージも含まれてるのがポイント。真鍮なら「エイジングしてくすんだ飴色」、銅なら「緑青が出た青緑」。新品の色よりも、時間を経た色のほうがスチームパンクとして機能する。
連想の地図、スチームパンクカラーの整理

整理すると、スチームパンクカラーはだいたい4つの素材イメージから来てる。「真鍮」「銅」「鉄」「革・木」。それぞれに初期の色と経年変化の色がある。

経年変化の色って、たとえば?

真鍮は酸化して、ぴかぴかの金色からくすんだ飴色になる。銅は赤みのあるオレンジ色。鉄は錆びて赤茶になる。革は使い込むほど色が深くなる。素材連想で説明できるのはこのあたりまでで、前回話した「くすんだ青や渋い緑、赤」は少し話が別なんだよ。

別?どういうこと?

あれはヴィクトリアン時代の服飾カラーとしてのベースがある。深みのあるボトルグリーン、ダスティなネイビー、テール・ド・シエンヌみたいな渋い赤褐色、当時の染色技術と流行の中で使われてきた色なんだ。スチームパンクがヴィクトリア朝を世界観の軸に置いてるから、そのカラーパレットがそのまま引き継がれてる。

なるほど、素材じゃなくて時代の色なんだ。

そう。素材連想とヴィクトリアンカラー、この2つが重なってスチームパンクの色の文法ができてる。どちらか一方じゃなくて、両方が根拠になってる。
では、白はどう成立するのか

ちょっと待って。それって、白はどういう位置づけになるの? 白って素材の連想……あまりない気がするんだけど。

そこが面白いところで。白は素材の連想じゃなくて、役割の連想から来てる。スチームパンクで白といえば「白衣」「研究者の作業着」「探検家の旅装束」みたいなイメージ。機械や発明と関わっている人が着ているもの、っていう連想ね。

科学者・発明家・冒険家、みたいな?

そう。スチームパンクってDIY精神やヴィクトリアン的な探求心が根っこにあるから、「何かを作ったり研究したりしてる人」を連想させる白は、世界観として馴染む。ただし真っ白じゃなくて、アイボリーがかった白が大事。

真っ白だと清潔すぎる、ってこと?

「使われてきた歴史がある」ことがスチームパンクの美しさのひとつだから、新品感のある白は浮いてしまう。少しくすんだアイボリー、オフホワイト、薄いクリーム色のほうが世界に馴染む。白の中に時間の経過を感じさせる、ちょっとした黄みが必要なんだ。もちろんそればかりじゃなくて無垢な純白で貴族的なイメージを出すというアイデアもある。

なるほど。じゃあ白を使うとき、他の色との組み合わせはどうするの?
白はキャンバス、連想を乗せていく

白ベースでスチームパンクをやるとき、基本的には白は主役じゃなくてキャンバスだと考えると整理しやすい。白の上に、さっき話した素材連想の色を乗せていく感じ。

キャンバス、か。何を乗せるかで表現が変わるってこと?

そう。たとえば一番シンプルなのが、オフホワイト+革の茶+真鍮小物。白が多い分、真鍮の金色がすごく映えて見えやすい。探検家っぽい実用的な感じで、普段着の延長としてスチームパンクを表現できる組み合わせ。

前回の「靴下から冒険する」に近い発想だ。普段のリネンシャツに真鍮のボタンつけるだけでもいける?

全然いける。白ベースは余白が多い分、小物の存在感が出やすいから入門としてもやりやすい。もう少しスチームパンク寄りにしたいなら、シャツをよれっとしたリネン素材にするだけで一気に時代感が出る。

白×真鍮以外の組み合わせも教えて!

もう少し物語感を出したいなら、オフホワイト+緑青の青緑をアクセントにするのが好き。白の清潔感と、銅の経年変化である青緑が対比して「長い旅の途中で少し汚れてきた装備」みたいな雰囲気が出る。ゴーグルやスカーフに青緑を入れるだけで全体が締まるよ。

「旅の途中で汚れてきた」って表現がいい!ちゃんと世界観になってる。

あと白×黒+真鍮差し色って組み合わせも安定感がある。白と黒で明快なコントラストを作って、そこに真鍮の金を一点投入する。ヴィクトリア朝の紳士っぽい、少しフォーマルなスチームパンクになる。

それ、普段のモノトーンコーデに真鍮のアクセサリーを足すだけで成立しそう!

成立する。それが白ベースのいいところで、日常服との親和性がとても高い。重厚な茶×黒コーデはちょっと気合いがいるとしたら、白ベースはふだんのオシャレの延長線上でスチームパンクを置ける選択肢。
まとめ「連想の文法を使いこなす」

今日の話、すごく整理された。「素材の色を使う」じゃなくて「素材から連想される色のイメージを使う」だから、塗装でも染色でも同じ効果が出せるんだ。

そう。「これは本物の真鍮か?」じゃなくて、「真鍮を連想させるか?」が大事。見る人の連想を動かすことができれば、スチームパンクの文法として成立する。

白って最初「スチームパンクじゃない」って思いがちだけど、連想の乗せ方で全然スチームパンクになるんだね。

白はキャンバスとして使う発想に切り替えると、コーデの幅がすごく広がる。「スチームパンクは茶と黒」って守ってた縛りが、実は縛りじゃなかったりする。

よし、まずオフホワイトのリネンシャツに真鍮のボタンつけてみる!

完璧な出発点。そのボタン一個が真鍮を連想させれば、それだけで「産業革命の時代」がそこに宿る。連想の文法を知ると、小さな選択に物語が乗るんだよ。
コラム:色は「連想」で動いている
スチームパンクの色を「真鍮だから金色、銅だから橙」と説明するのは、半分正しくて半分足りない。
実際のファッションやデザインでは、本物の真鍮を使うこともあるし、それっぽく塗装した金具を使うこともある。そっくりな色の革を選ぶこともある。どれも「スチームパンクの色」として機能する。
重要なのは素材そのものではなく、素材が呼び起こすイメージだ。くすんだ飴色の金なら真鍮の経年変化を、渋い青緑なら銅の緑青を連想させる。その連想が成立すれば、どんな素材でスチームパンクの文法として動き出す。
白も同じで、素材の連想ではなく「役割の連想」で機能する。白衣、研究者の作業着、探検家の旅装束。スチームパンクの世界に生きる人たちが着るものとして、白はその文脈を引き受ける。ただし真っ白ではなく、時間の経過を感じさせるアイボリーやオフホワイトで。
色を選ぶとき、「この色は何を連想させるか」を問うこと。それがスチームパンクの色の文法を使いこなす、最初の一歩になる。
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文・構成:ツダイサオ(日本スチームパンク協会 理事)
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