【第1回】スチームパンクとは?— 蒸気と機械が織りなす世界
- 日本スチームパンク協会
- 2月21日
- 読了時間: 6分
更新日:6月12日

喫茶『蒸談』へようこそ
ここは蒸気と機械、そして想像力が交差する場所
歯車が回るように、言葉を紡ぎながら
スチームパンクの世界をめぐるひとときを
さあ今日の話題は?
スチームパンク
スチームパンク(英語: steampunk)は、レトロフューチャーやサイエンス・フィクションのサブジャンルの1つである。関連ジャンルとしてファンタジー、歴史改変もの、スペキュレイティブ・フィクションがある。 Wikipedia「スチームパンク」より
■この対談に登場するふたり

MaRy(マリィ):日本スチームパンク協会 代表理事。感覚派で、スチームパンクの“ワクワクするところ”を見つけ出すのが得意。気になったことはどんどん質問するスタイルで、対談の聞き手としても案内役としても活躍中。

ツダイサオ:日本スチームパンク協会 理事。物事を論理的に捉えるタイプで、歴史や文化、技術の観点からスチームパンクを語るのが得意。蒸談ではMaRyの投げかけにじっくり応える“解説役”として登場することが多い。
◆スチームパンクって何?◆


ねえねえ、「スチームパンク」って結局、何なの?

スチームパンクとは?か、いきなり核心を突いてきたね(笑)。

だって、歯車とかゴーグルとかのイメージはあるけど、「何をもってスチームパンクなのか」って、実はよく分かってない人も多いんじゃないかなって。

うん、確かに。スチームパンクをひと言で説明するなら「19世紀の技術観で発展したもう一つの世界」って感じかな。

もうちょっと詳しく!

今の世界は電気やデジタル技術が発展した未来でしょ? でもスチームパンクの世界では、「もし蒸気機関や歯車機械が主流のままだったら?」っていう仮想の未来を描いてるんだ。たとえば、この画像みたいに。


ヴィクトリアンな建物の外壁には、太い配管が張り巡らされてて、蒸気を送るバルブがガチャガチャと並んでる。空を見上げれば、飛行船がゆっくり旋回していて、町の煙突からはからは煙がたなびいている――。そんな“もう一つの未来”が、スチームパンクの世界なんだよ。

なるほど。現実の19世紀では電気や内燃機関が登場して、蒸気機関は主役の座を譲ったけど、スチームパンクの世界では「蒸気がそのまま進化し続けた」っていう前提なのね。

そうそう。それに、ただのレトロな世界じゃなくて、「過去の技術を未来的に発展させる」っていう想像力が大事。だから、蒸気で動く飛行船や、歯車仕掛けの義手を持つ発明家なんかが登場するんだよ。
◆スチームパンクの見た目の特徴◆

じゃあ、見た目の特徴って? たとえば、スチームパンクの服装って、どういうイメージ?

基本は19世紀の服装をベースにしてる。ビクトリア朝のドレスとか、燕尾服とかね。ただ、それだけじゃなくて、ゴーグルや革のハーネス、機械的な装飾を加えるのがスチームパンクらしさ。

あー、だからあの「機械とクラシックが混ざった感じ」になるんだね。

そうそう、たとえばこんな感じで。
コルセットにベルト、たくさんのボタンが装飾として組み合わされてる。しかも、ただ飾ってるだけじゃなくて、「機能してそう」に見えるのがポイントなんだ。服そのものが、まるで機械の一部みたいでしょ。

なるほどね、パーツの選び方ひとつで、すごく“物語”が生まれる感じがする!

で、もうちょっと大人数のスタイルで見てみると──

たとえばこういう、The League of S.T.E.A.M.っていうチームも有名だったね。スチームパンクのモンスターハンター集団っていう設定で、衣装だけじゃなくて、背中に背負ったガジェットやパイプ、奇妙な計測器まで全部「ありそうでなかった未来の発明品」って感じで作り込まれてる。まさに“動くスチームパンク劇場”みたいな存在だったんだ。

ほんとだ…それぞれが完全にキャラになってる。衣装っていうより、役を演じてる感じ。

うん、残念ながら今はもう活動していないんだけど、YouTubeに動画が残ってて、今見てもワクワクするよ。ヴィジュアルだけでも世界観が伝わってくるから、言葉がわからなくても楽しめる。スチームパンクの魅力がぎゅっと詰まった名作だね。
◆スチームパンクはSF? 歴史もの?◆

これ、ずっと気になってたんだけど……スチームパンクって、SFなの? それとも歴史もの?

実はその間、っていうのが正解かな。

え、間?

うん。SFは「科学的な根拠をもとに未来を描く」ジャンルだけど、スチームパンクは「過去の技術が進化した別の未来」を描いてる。だから、歴史とSFの中間にあるジャンルとも言える。

なるほど。たとえば、蒸気で動くエレベーターとか、歯車仕掛けの計算機みたいなもの?

そうそう! たとえば、蒸気と歯車で動く計算機とか、巨大なパイプオルガンのような装置で制御されるエレベーターみたいなもの。実際、19世紀にもそういう機械式の発明はあったし、それをさらに発展させた世界がスチームパンクなんだ。
◆スチームパンクを楽しむには?◆


じゃあ、スチームパンクを楽しむには、どこから入るのがいいの?

入り口はいろいろあるよ。映画や小説、ファッション、DIY……。

たとえば?

映画なら『ワイルド・ワイルド・ウエスト』が代表的かな。西部劇とスチームパンクを組み合わせた作品で、巨大な機械仕掛けの蜘蛛型兵器が出てくる。 アニメなら、大友克洋の『スチームボーイ』。まさに蒸気と歯車の世界を描いた王道的な作品だね。

それから、ジブリ作品でも『天空の城ラピュタ』や『ハウルの動く城』は、スチームパンクと呼ばれることが多いよ。あの独特の機械の動きや、空を飛ぶ城なんかは、まさにその世界観に通じてる。

なるほど、そう考えると意外と身近なところにもあるんだね!

そうなんだよ。スチームパンクって明確にジャンルとして分類されることは少ないけど、要素として取り入れられている作品はたくさんあるから、そういう視点で映画を観ると面白いよ。
◆スチームパンクの面白さとは?◆

最後に、スチームパンクの一番の魅力って何だと思う?

やっぱり「過去と未来の融合」かな。歴史に根ざしたリアリティと、そこから広がる「もしも」の想像力が合わさって、独特の世界観を作ってる。

たしかに、ファンタジーともSFとも違う、独自の魅力があるね。

うん。決まった形がないからこそ、いろんな楽しみ方ができる。それこそ、「自分だけのスチームパンク」を作れるのが面白さなんじゃないかな。

なるほどねえ。ちょっと、私も新しいゴーグル探してみようかな。

いいね! まずはそこから、スチームパンクの世界に踏み込んでみよう。

うん、楽しみになってきた!
コラム:入り口は、いくつあってもいい
最初に「スチームパンク」に出会ったとき、誰もが「これは何?」って思う。でも不思議と、“説明されなくても惹かれてしまう”ことがある。
ある人は映画で、ある人はアニメやゲームで。ファッションに惚れた人もいれば、自分で何か作ってみたくなった人もいる。どこから入っても、その瞬間から、もうスチームパンクの住人だ。
たとえば、歯車が好き。蒸気の音がワクワクする。古びた真鍮の輝きにぐっとくる。──それだけで、十分すぎる理由になる。
誰かのつくった“正解”よりも、自分が感じた“好き”のほうが、ずっと確かだ。
この喫茶『蒸談』では、そんな「入り口」から始まる小さな物語を、毎回すこしずつ拾っていきたいと思っている。
なにかに惹かれたあの日のことを、ちょっとだけ思い出してもらえたらうれしい。

文・構成:ツダイサオ(日本スチームパンク協会 理事)
スチームパンクにまつわるデザイン、企画、執筆を通じてものづくりと空想の魅力を発信中
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