【第41回】写真と動画でのぞく、ヴィクトリア朝ロンドンの日常
- 日本スチームパンク協会

- 4 日前
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喫茶蒸談へようこそ
― 1900年前後のロンドン ―
1900年前後のロンドンって、どんな雰囲気だったんだろう。古い写真と、カラー化された1901年の動画を手がかりに、霧の都の空気や、人々の暮らしをゆるくのぞいてみる回です。
最後に、服を“標本”のように見せてくれる一冊も紹介します。気軽に当時の生活をイメージできる、そんな内容でお届けします。
■この対談に登場するふたり

MaRy(マリィ):日本スチームパンク協会 代表理事。感覚派で、スチームパンクの“ワクワクするところ”を見つけ出すのが得意。気になったことはどんどん質問するスタイルで、対談の聞き手としても案内役としても活躍中。

ツダイサオ:日本スチームパンク協会 理事。物事を論理的に捉えるタイプで、歴史や文化、技術の観点からスチームパンクを語るのが得意。蒸談ではMaRyの投げかけにじっくり応える“解説役”として登場することが多い。
『写真で見る ヴィクトリア朝ロンドンの都市と生活』をひらく

これ見て。『写真で見る ヴィクトリア朝ロンドンの都市と生活』。ちょっと前の本なんだけど、写真が本当にすごい。

ああ、それは“リアルな19世紀ロンドン”を知るには最強クラスの本だよ。今はプレミアがついててちょっと高くなってるけど、資料としての価値はずっと変わらないね。

ページをめくるたびに、当時の空気の濃さが伝わってくるような感じがする。映画のセットとはまったく違う、生々しい生活が写ってる。

19世紀ロンドンって、よく“霧の都”って呼ばれるでしょ? でもあれ、実際のところは“霧”じゃなくて スモッグなんだよね。

そうなんだ!

そう。石炭暖房と工場の煙が混ざりあって、本物の霧と区別がつかないくらい濃かった。写真で昼間なのに薄暗く見えるのは、まさにこのスモッグのせいだよ。街灯のすぐ下でも影がぼやけるレベルで、視界数メートルなんて日もあったらしい。

そう聞くと、写真の“暗さ”にも納得だね。あれは当時のカメラ性能の問題じゃなくて、街の空気そのものなんだ。
人々の生活がそのまま写っている


あ、このウォーターループレイスの写真(p124)すごくいいね。路上で人形劇を見ている子どもたちの表情がそのまま残ってる。なんだか一瞬の賑わいが閉じ込められてる感じがする。

ウォーターループレイスは当時、ちょっとした見世物が行われる場所だったんだよ。人形劇や大道芸は“路上の娯楽”として人気があって、こういう光景は街のあちこちで見られた。みんな生活は大変だったけど、こういう場面をみると“街の息遣い”みたいなものが伝わってくるよね。

室内の写真も良いよね。

うん、写真なのに“暗い部屋の匂い”まで伝わるような気がする。外のスモッグの空気と室内の光が、ほんとうに違う世界みたい。

明るさというより“明度”の文化が違うんだよね。ガス灯、石炭、厚いカーテン、暗い木材―全部が合わさって、ヴィクトリア朝特有の空気を作ってる。谷崎潤一郎の陰翳礼讃とはまた違った重さがある。
動いている1901年のイングランドを見る

ツダさん、この動画見た?1901年のイングランド、工場から出てくる人たちを撮影した映像なんだけど、カラー化されていて、びっくりするほど“今っぽい”んだよ。

見たよ。本当に衝撃的だよね。写真では静止していた時代が、色と動きで突然“生きた世界”に変わる。

そうなの。ただの白黒映像じゃなくて、服の色味、肌の感じ、歩くテンポまで伝わってきて、「1901年が急に近づいてくる」みたいな不思議な感覚になった。

今回の映像をアップしているチャンネルは、古いフィルムを現代の技術で修復しているんだ。チャンネル紹介を日本語にすると、こんな感じ。
「こんにちは、NASSです。古い映像をニューラルネットワークで修復・高解像度化するのが好きです。現代のソフトウェアを使って、・手ブレ補正・速度補正・コントラスト調整・シャープネス強化・ノイズ除去・ホコリや傷の除去・AIによる着色・雰囲気づくりの環境音付加などを行っています。

こうして見ると、細かい工程がすごいね。“古い映像を現代的に見えるようにする”って、こんなに作業してるんだ。

しかも重要なのは、映像そのものは当時に撮影された“本物のフィルム”だということ。AI生成の動画じゃない。あくまで1901年のリアルな光景を、現代の技術で“鮮明に蘇らせている”だけなんだ。

そこが本当に大事。だから映像に出てくる人たちの仕草が全部自然なんだよね。笑い方とか、歩き方とか、カメラに気づいて照れる感じとか。工場から出てくる女性たちの服の揺れ方を見て、「布って本当にこんなに重かったんだ…」って思った。

わかる。動画を見ると、生地の厚さや張りが一目でわかるよね。

当時の服装って、デザインじゃなくて“生活の道具”そのものだってよく分かったよ。

動画でしか分からないことって本当に多いんだよね。馬車の速度、工場の規模、人の流れ、建物の質感――どれも写真では読み取れない情報ばかり。

人の表情もいいよね。笑ったり、仲間と話したり、照れた顔をしたり……白黒写真だと“じっとした肖像”に見えるけど、動画だと「普通にそこに生きていた人」ってことが一瞬で分かる。

写真は“瞬間の証拠”だけど、動画は“時間を持った証拠”なんだ。カラー化されて速度補正されると、「1901年が遠い時代ではなく、ちょっと昔の街」に感じられる。

うん、歴史が急に“向こう側の世界”じゃなくて“少し背伸びすれば触れられる世界”になるんだよね。

このチャンネルの面白いところは、1900年代初頭の世界中の映像 を同じ技術で修復していること。同時代のいろいろな町が比較できるんだ。ほかにも同じようなチャンネルいくつかあるからそれらと比べるのも面白い。

あ、それめっちゃ良い。写真じゃ分からなかった「世界の同時代性」ってやつだね。

ヴィクトリア朝の生活を理解する上でも、こういう映像資料は本当に強力なヒントになるよ。
この本、めっちゃ見てて楽しいよねって話

『あたらしい近代服飾史の教科書』これめっちゃ良くない? 標本みたいに服を見せてくれるの、ずっと見ちゃうやつ。

分かるよ、あれほんと“眺めてるだけで楽しい系”の本だよね。難しいことを言われるより、ただ「この服こうなってるんだ〜」って写真を見れるのがいい。

そうそう!生地の厚みとか、縫い目とか、重さが目でわかる感じ。なんか図鑑見てるみたいでワクワクする。

あと個人的に好きなのは、服の“裏側”が分かるところ。表からは見えない工夫がいっぱいあるんだよね。

いいよね!見た瞬間「こうなってたんだ」ってなるやつ。服の重さとか、不便さとかもなんとなく伝わる。

うん、でも説明はそんなに堅くないから、ちょっと疲れた時にパラパラ見るのにちょうどいいんだよ。

しかもさ、昔の動画を見た後にこの本見ると、「あ、この人が着てた服ってこういう作りなのね!」っていうのがすごく楽しい。

うんうん、それめっちゃ分かる。

なんか、時代のパズルがつながってくるのが楽しいよね。“服の構造”と“当時の動き”が噛み合う瞬間が気持ちいいというか。

結局ね、この本は「歴史を勉強するぞ!」って気合い入れなくても、ただシンプルに“眺めるだけで楽しい”1冊なんだよね。

うん、それがちょうど良いと思う。細かく読んでもいいし、気が向いたページだけ見るのもあり。

写真好きでも、服好きでも、昔の生活に興味ある人でも、どこから読んでもちょっと楽しくなるタイプの本。

ほんとそう。動画で時代の空気を感じて、この本で“着てたもの”を見るだけでなんか当時の人に一歩近づける気がするよね。

文・構成:ツダイサオ(日本スチームパンク協会 理事)
スチームパンクにまつわるデザイン、企画、執筆を通じてものづくりと空想の魅力を発信中
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