ポストアポカリプスとは?終末後の世界を描くジャンル
- 日本スチームパンク協会

- 21 分前
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喫茶蒸談へようこそ
「北斗の拳みたいな、あの荒廃した世界観のやつ?」そう、でもそれだけじゃない。
この記事では、ゲームもアニメも映画もよく知らないけど「ポストアポカリプス」という言葉をどこかで聞いた、という人に向けて、このジャンルの意味・歴史・代表作を対談形式でまるっと解説します。
■この対談に登場するふたり

MaRy(マリィ):日本スチームパンク協会 代表理事。感覚派で、スチームパンクの“ワクワクするところ”を見つけ出すのが得意。気になったことはどんどん質問するスタイルで、対談の聞き手としても案内役としても活躍中。

ツダイサオ:日本スチームパンク協会 理事。物事を論理的に捉えるタイプで、歴史や文化、技術の観点からスチームパンクを語るのが得意。蒸談ではMaRyの投げかけにじっくり応える“解説役”として登場することが多い。
「なんとなくわかるんだけど、説明できない」


ポストアポカリプスってさ、なんとなくわかるじゃん。でも「一言で説明して」って言われたら詰まるんだよね。

あー、わかる。みんなそう。

「世界が終わった後の話」……でいい?

ほぼ正解。正確には、文明が崩壊した後の社会を描くジャンル。 「終わり方」じゃなくて「終わった後」にフォーカスするのがポイント。

終わる瞬間じゃなくて、終わった後。

そう。核戦争で人類が半滅した「その翌日」から話が始まる。そういうやつ。

なんか「アポカリプス」って、なんか宗教っぽい響きだよね。

もともとはそう。ギリシャ語で「啓示」、聖書の「ヨハネの黙示録」に出てくる言葉で、神が世界を終わらせるという宗教的な概念だった。

それがいつのまにかSFジャンルの名前になってるの、面白いよね。

転換点は1945年の原爆投下。人類が初めて「自分たちで文明を終わらせられる」と知った瞬間。ここから終末は神の領域じゃなくなった。

終末の「民主化」みたいな。

うまいこと言う(笑)。そう、誰でも終わらせられる時代になったから、フィクションでもリアルに描けるようになった。
"砂漠と廃墟"のイメージはどこから来たのか

北斗の拳とかマッドマックスのイメージが強すぎて、「ポストアポカリプス=砂漠」って思ってた。

あれが世界に刷り込んだんだよね。1981年のマッドマックス2で「砂漠・改造車・資源争奪」という視覚言語が確立して、1983年の北斗の拳でそれが日本にも浸透した。

「ひでぶ」とか「あべし」とかの世界ね。

そう。あの時代に「ポストアポカリプスといえばこれ」というビジュアルが固まった。でも本来は、砂漠でなくてもいい。条件はただひとつ文明が崩壊していること。

じゃあ「ポストアポカリプス」って、かなり広いジャンルなの?

そう。大きく分けると、こんな感じ。
タイプ | 特徴 | 代表作 |
荒廃型 | 砂漠・廃墟・暴力社会 | マッドマックス、北斗の拳 |
再建型 | 文明をゼロから作り直す | Dr.STONE |
静寂型 | 終わった世界をただ旅する | 少女終末旅行 |
高度文明崩壊型 | 超文明の残骸が残る | 風の谷のナウシカ、ニーアシリーズ、∀ガンダム |
地下型 | 地上が使えず地下に閉じこもる | ブレスオブファイアV |
文明後退型 | 壁の中など、閉じた社会 | 進撃の巨人、約束のネバーランド |

少女終末旅行、大好き。あれもポストアポカリプスなんだね。

あれは「静寂型」の極致。暴力も争いもなくて、ただ終わった世界を二人でゆっくり歩いていく。同じジャンルとは思えないくらい、マッドマックスと温度が違う。

終末のムードが全然違う。
ディストピアとの違いって何?

あと、よく混同するのが「ディストピア」。違いって何?

いい質問。これが一番混乱するポイントだよね。一言で言うと
ディストピア:秩序はある。でも最悪。
ポストアポカリプス:秩序がない。文明が崩壊している。

ハンガーゲームとか1984はディストピア?

そう。政府があって、ルールがあって、管理されてる。暗い社会だけど、社会として機能してる。ポストアポカリプスは「社会そのものが壊れた後」

管理する側がいるかどうか、か。

ただ、両方の要素を持つ作品もある。進撃の巨人は「壁の中の支配社会(ディストピア)+外側の崩壊世界(ポストアポカリプス)」みたいな構造。
ゲームとの相性は抜群

ゲームにも多いよね、このジャンル。

相性がいいんだよ。理由は「探索できる」から。文明崩壊後の廃墟を自分の足で歩き回れる。ラストオブアスとかフォールアウトとかがその典型。

ラストオブアスは映像化もされて、すごく話題になったよね。

あれは「感染症で文明が崩壊した後の父と子」の話。荒廃した世界が舞台だけど、核心はずっと人間関係。ポストアポカリプスのフォーマットを借りた、人間ドラマ。

ここで聞かないといけない。ツダさん的に「これは外せない」ってやつは?

まずPS2のゲームでブレスオブファイアVドラゴンクォーター

聞いたことない……。

知名度は低いけど、ポストアポカリプスの作り方が独特で。地上が汚染されて、人類が地下都市に閉じ込められてる世界なんだ。

砂漠じゃなくて地下か。

そう。「終末の閉塞感」を砂漠の広さじゃなくて、地下の狭さで表現してる。しかも「残りHP」みたいな感覚で「竜の力を使うと寿命が縮む」という設計で、プレイヤー自身が終末を体感する。

うわ、それは体で覚えるポストアポカリプスだ。

もう一本は真・女神転生シリーズ。初代から、東京が崩壊して悪魔と人間が共存する世界を描き続けてる。

あれ、宗教っぽい要素もあるよね。

そこがポイントで、宗教的終末(神・悪魔の戦争)と科学的終末(核戦争・都市崩壊)が同居してる。アポカリプスの語源に戻ってきたみたいな感じがして好き。
ポストアポカリプス簡易年表
年 | 作品・出来事 | 意味 |
1826 | 小説『最後の人』(メアリー・シェリー) | 文学的終末の原型 |
1945 | 広島・長崎への原爆投下 | 終末がフィクションから現実へ |
1957 | 小説『渚にて』 | 核戦争後の世界文学の傑作 |
1981 | マッドマックス2(映画) | "砂漠・廃墟"のビジュアル確立 |
1983 | 北斗の拳(漫画) | 日本にジャンル定着 |
1984 | 風の谷のナウシカ(映画) | 高度文明崩壊型の金字塔 |
1992 | 真・女神転生(SFC) | 宗教×科学終末の融合 |
2002 | ブレスオブファイアV(PS2) | 地下型・閉塞感で革新 |
2013 | ラストオブアス(PS3) | 体験型・人間ドラマへの深化 |
2017 | Dr.STONE(漫画) | 「再建」という希望型の登場 |
2018 | モータル・エンジン(映画) | 「都市が都市を食う」異形のスチームパンク+ポストアポカリプス |

改めて整理してみると、ポストアポカリプスって「終わった後に何が残るか」を描くジャンルなんだね。

そう。滅びた後の廃墟、さびれた機械、手作りで修理された道具。あれ全部、時間の経過と人間の痕跡なんだよ。

なんか、それって……スチームパンクと似てない?

あ、鋭い。俺もそれずっと感じてる。

スチームパンクって、蒸気と真鍮と歯車で、機械の構造がむき出しになってる世界観でしょ。それって「機能が見える美しさ」みたいな。

ポストアポカリプスの廃墟メカも、まったく同じ引力を持ってる。マッドマックスの改造車も、ドラゴンクォーターの地下技術も、錆と修理跡と人間の手仕事が積み重なってる。

完璧じゃなくて、使い込まれた感じ。

そこが本質だと思う。スチームパンクも、ポストアポカリプスも、根底にあるのは「機械が楽しかった時代への憧れ」なんじゃないかな。パーフェクトなハイテクじゃなくて、配管が通って、蒸気が漏れて、ギアが噛み合って動くその生命感みたいなもの。

マッドマックスの廃材車も、スチームパンクの飛行船も、同じ感情から来てる、か。

ジャンルは全然違うのに、惹かれる理由は同じ。使い古された未来への愛着、とでも言うか。まだちゃんとした名前がないけど、確かにある感情だよ。

それを語り始めると、スチームパンクの話になっていくんだね(笑)。

ポストアポカリプスを好きになった人が、次にスチームパンクに引き寄せられるのは、必然だと思う。同じ感覚を共有してるから。
FAQ
Q. ポストアポカリプスとは?
A. 核戦争・疫病・天変地異などで文明が崩壊した"後"の世界と人間を描くジャンル。滅びの瞬間ではなく、その後の社会にフォーカスする点が特徴。
Q. ディストピアとの違いは?
A. ディストピアは「歪んだ秩序が残る社会」、ポストアポカリプスは「秩序ごと崩壊した後の世界」。管理する側が存在するかどうかが目安。
Q. 日本の代表作は?
A. 北斗の拳・風の谷のナウシカ・Dr.STONE・少女終末旅行・真・女神転生など。
Q. ポストアポカリプスとサバイバルものは同じ?
A. サバイバルものは「個人が生き延びる」話、ポストアポカリプスは「文明崩壊後の社会・世界」が舞台。重なることは多いが、スケールが違う。
Q. ゲームで入門するならどれ?
A. まず『The Last of Us』(ドラマ版でもOK)か『Dr.STONE』(漫画・アニメ)がとっつきやすい。
Q. 「アポカリプス」単体とは何が違う?
A. アポカリプス=世界が終わる瞬間の物語。ポストアポカリプス=その後の物語。映画『デイ・アフター・トゥモロー』はアポカリプス寄り、北斗の拳はポストアポカリプス。
ポストアポカリプスが好きな人へ、次はスチームパンクを
廃墟の機械、使い込まれた道具、時間の経過が宿るデザイン。ポストアポカリプスに惹かれる感覚は、スチームパンクへの入口でもある。
ツダイサオとMaRyが所属する日本スチームパンク協会では、「機械が楽しかった時代」と「使い古された未来」というまだ共通する感覚について、対談形式でじっくり語り合っています。
「鳥山明先生のメカはなぜスチームパンクと親和性が高いのか?」その問いから始まる記事はこちら。
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文・構成:ツダイサオ(日本スチームパンク協会 理事)
スチームパンクにまつわるデザイン、企画、執筆を通じてものづくりと空想の魅力を発信中
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