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【第15回】ギレルモ・デル・トロの驚異の部屋とスチームパンクの世界

  • 執筆者の写真: 日本スチームパンク協会
    日本スチームパンク協会
  • 5月28日
  • 読了時間: 2分

更新日:6月6日


喫茶蒸談タイトルバナー

喫茶『蒸談』へようこそ


ここは蒸気と歯車、そして未知への好奇心が息づく場所

並ぶ小瓶、色あせた図鑑、ゼンマイ仕掛けの昆虫標本それぞれが

世界のどこかで拾われた“驚異”のかけら

今日は、デル・トロの物語と、スチームパンクな「驚異の部屋」について収集と想像が交差する

秘密の展示室へ──




コラム:「未知への好奇心と蒐集の美学」


“驚異の部屋(ヴンダーカンマー)”という概念は、スチームパンクの世界観にぴたりと重なる。 それは、科学と魔術のあいだで揺れる世界に生きる人々が、未知なるものに抱いた純粋な興味の結晶だ。

当時の「驚異の部屋」には、動物の骨格標本、異国の道具、錬金術の器具など、ジャンルも起源も異なる品々が無造作に並べられていた。 だが、それらは無秩序に積まれていたわけではない。そこには「世界の仕組みを理解したい」という知の衝動と、「美しきものを残したい」という審美の心が混ざり合っていた。


スチームパンクのデザインもまた、まるで小さな驚異の部屋のようだ。 誰かが残した機械装置。名前のない歯車群。使途不明の配管と、規則の読めない数字。 それらは、「何に使うのか」という合理性よりも、「なぜここにあるのか?」と問いかけたくなる存在であることに意味がある。


ギレルモ・デル・トロの作品にしばしば登場する仕掛けや意匠も、まさにそうだ。 それが何のために存在しているのかは、見る者には明かされない。だが、見る者はそこに物語の欠片を感じとる。 “完全に理解できないもの”への憧れと畏れ──それこそが、蒐集の美学であり、スチームパンクの原風景なのかもしれない。






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